新潟市は北陸・甲信越エリアの中でも観光資源が多彩で、都市型観光と自然観光の両方を楽しめる数少ない地方都市です。古町や万代といった繁華街の都市機能に加え、佐渡航路の玄関口である新潟港、さらに月岡温泉や岩室温泉へのアクセス拠点としても機能しています。また、東京から上越新幹線で約2時間というアクセスの良さもあり、インバウンド観光客の受け皿としてのポテンシャルも高いと言えます。
近年のデータを見ると、コロナ禍で落ち込んだ観光客数は2023年以降回復傾向にあり、とくに台湾や韓国など東アジアからの訪日需要が戻ってきています。冬はスキーリゾート、春は花見や温泉、夏は海水浴や花火大会、秋は食文化イベントと、年間を通して集客力がある点も新潟の強みです。
民泊・旅館事業の拡大余地
こうした観光需要の回復と並行して、民泊・旅館業の新規参入も増えています。特に中心市街地では、既存の空き家や中古ビルをリノベーションして宿泊施設に転用する事例が目立ちます。行政も観光誘致に積極的で、「新潟市観光戦略プラン」では宿泊施設の多様化や地域体験型観光の推進を掲げています。
Airbnbなどの宿泊プラットフォーム上でも、新潟駅周辺や古町エリアで掲載件数が増加しており、1泊あたりの単価は平日で8,000〜12,000円、週末やイベント時にはその1.5倍以上になることもあります。立地条件やブランディング次第では、年間稼働率60〜70%を維持できる可能性があります。
しかし、観光投資には「波」があります
一方で、観光需要は外部要因の影響を強く受けます。豪雪や台風などの自然条件、感染症の流行、海外経済の変動、為替レートの変化など、リスク要因は多岐にわたります。実際、2020〜2021年には稼働率が20%台まで落ち込み、ローン返済に苦しむ投資家も少なくありませんでした。
また、地方都市では季節による需要の偏りも大きく、冬季や梅雨時期は稼働率が低下する傾向にあります。繁忙期と閑散期の差が大きいため、キャッシュフローの安定性という観点では不安定なビジネスモデルだと言えます。
特に新潟市の場合、観光とビジネス需要のバランスが首都圏ほど安定していないため、「観光専業型」の宿泊事業はボラティリティ(変動性)が高く、長期的に安定した利回りを確保するには工夫が必要です。
レジデンス系不動産とのハイブリッド投資が有効です
こうした背景から、有効な戦略として挙げられるのが「観光×レジデンス」のハイブリッド運用です。つまり、民泊や簡易宿所として運用できる物件を、平常時には中長期の居住賃貸としても活用できる設計にしておくという考え方です。
たとえば、築浅のワンルームや1LDKタイプの分譲マンションを、観光シーズンだけ短期貸しに切り替える「セミ民泊型運用」や、空室期間を想定した「マンスリー・ウィークリー対応型」などが代表的です。
このような運用形態であれば、観光需要が低迷しても通常の賃貸需要でキャッシュフローを補うことができ、リスク分散が可能になります。
さらに、レジデンス系不動産は金融機関からの融資評価が高く、ホテル型投資よりも借入がしやすい傾向があります。土地建物の価値も比較的安定しているため、出口戦略(売却や再賃貸)も柔軟に行うことができます。その結果、リスクを考慮した実質的な収益性は、観光専業型よりも高くなるケースも多いです。
今後の展望と投資判断のポイント
新潟市は、観光都市として再成長の段階にあります。しかし、短期的な収益を狙った民泊投資は外的要因に左右されやすく、リスクを伴います。今後の人口動態や都市政策を踏まえると、安定した賃貸需要が存在する中心市街地や大学周辺エリアに、レジデンス系の資産を組み合わせることが、持続的なポートフォリオ形成につながると考えられます。
不動産投資では、「景気に左右されない柱」を持つことが重要です。新潟の観光需要は確実に伸びていますが、その波に乗り続けるためには、観光と居住の両輪で運用できる仕組みを整えることが求められます。
短期的なトレンドに左右されず、安定性と柔軟性を両立させる――それこそが、新潟市における次世代の不動産投資戦略と言えるでしょう。